【柿渋について】
イオリ工芸の柿渋染めは、無臭柿渋液、柿渋染液、あたご柿による柿渋液を使用しており、化学薬品は一切使用しておりません。以下、柿渋についてまとめてみました。

1、柿渋の歴史
渋柿のまだ青い果を7月上旬に採取します。これをすり潰し、圧搾(あっさく)してできた果汁を醗酵させ、ろ過したものを柿渋といいます。これが「渋柿」と「柿渋」の違いとなります。柿渋はその醗酵の年季、濃度、搾り回数などにより品質が分類されます。主成分は柿タンニンです。渋柿にとってこの柿タンニンは未熟な種を守るための防衛手段なのです。


 6月下旬の様子(裏庭にて)

日本における柿の歴史は縄文、弥生時代ともいわれ、柿渋としての活用は、すでに平安時代に染料、塗料として一般庶民の必需品として重用されていました。江戸時代には、全国各地で生産がなされており、糸、布、紙、木などへの染色、塗装や、薬用としての活用など用途が広がりました。

戦後、合成化学薬品の時代へと変化していくなかで需要は激減していきましたが、現在においては環境問題や健康志向として、また、柿渋の持つ色合い、風合いなどが見直され、バッグなどの小物や自然素材の塗料として使用が広まりつつあります。時間とともにその風合いを楽しむことができる数少ない天然の染めといえます。

2、柿渋の用途
柿渋染めを施すことにより、耐水性が向上し、防腐効果、防虫効果、収斂(しゅうれん)作用(収縮する作用)が働きます。かつてこれらの効果より、漆器の下地塗りや、漁網用染料、酒袋の補強用、和傘、型紙、紙衣などと幅広く使われてきました。


 酒袋(白方所蔵品)

《用途例》
  ・和傘に塗装して、耐水性を向上。
  ・型紙、渋紙、一閑張、渋うちわとして紙を補強。
  ・紙などの接着剤として使用。
  ・漆器の下塗りとして使用し、漆の染込みを抑える。
  ・日本酒、酢、醤油の製造の際の、ろ過用袋を補強するために使用。
  ・漁民が漁網の強度向上のため網に塗る。
  ・綿糸を染めて釣り糸として使用。
  ・建材の自然塗料として、家屋の柱、床、梁などに塗る。
  ・桶、籠の防水、補強として使用。
  ・常備薬、漢方薬として
   飲み薬:高血圧、脳卒中、二日酔い、下痢
   塗り薬:火傷、しもやけ、虫刺され、解毒、化粧品、口臭除去

3、柿渋染めの特徴
1)主成分である柿タンニンには、防虫、防水、防カビ、湿気予防、防腐、抗菌、紫外線を予防する効果を持ち、柿タンニンに含まれるポリフェノール化合物は抗酸化物質であり、消臭効果もあります。また、癌や老化に対する予防効果としての研究も進められています。

2)染めたものには収斂(しゅうれん)作用(収縮する作用)が働き、これが耐水性を向上させるもととなっています。素材を丈夫にするのはこのためです。染め重ねる程、この作用は強くなります。

3)乾いた後、陽に当るほど濃くなっていきます。また、染め重ねることによっても濃くなっていきます。好みの色へと染めることができますが、染色後の変化は自然まかせということになります。

 染め重ね(左が染め回数が多い)

4)柿渋は鉄との相性がよく、すぐに反応して黒っぽくなってしまいます。水洗いによって少し濃くなることがあるのは、水に含まれるわずかな鉄分と反応しているのです。ですから水洗いの場合、軟水を使用することにより変化を抑えることができます。また、土にも鉄分は多く含まれているので、土の上に放置しないように気をつけます。




*柿渋の薬用としての効果については、その効果を期待するという目的のために商品、作品等が作られたものではなく、すべての人に効果として保証されるものではございません。

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